ある日、彼女が絵を描くその横に座り、ただじっと見ていて気がついた。ひょうひょうとした指が、色鉛筆がたくさん入った籐の籠の中をただなんとなくまさぐり、たまたま指に触れた色鉛筆を掴まえて色を塗る、それまで私は、なんとなく勝手にそう思っていた。けれど、「ただなんとなくまさぐ」って一本の色鉛筆を拾い上げた後、やはりひょうひょうとした視線の端で色を視野に捕らえ、意にそぐわない色であったのだろう、その鉛筆をまた籠に戻した。そんな事を数回繰り返しながら、糸を織り重ねるようにして、少しずつ、彼女は1枚の絵を仕上げていく。(スズキ・マ)